六月下旬

 梅雨の日の午後である.今夜は2週間ぶりのTwitNoNukes大阪主催の関電前行動の日.時間がきたら雨具をもって出かける.さてこの2週間,いろいろ忙しくもあり考え事もありで,ここで書く余裕がなかった.取りあえずは前にも書いた数理解析研究所講究録に出す原稿ができ,送った.それは研究集会ホームのここにある.締め切りまでもう少し時間があるので,もういちどだけ手を入れるかも知れないが,この15年ほどやってきて考えたことごとを整理することができた.数学に関すること以外は,教育論というか,人間観というか,それが中心である.いろいろな意味で日本の教育は大きな曲がり角にきている.同時にそれは,教育のなかだけではどうにもならない大きな問題である.そしてそれはこれからの大きな世の変動の中で新しい人間が生まれ出てくることでしか拓かれてゆかない.ということで一つの区切りを付けた.
 その世の動きであるが,滋賀県の知事選挙が告示され,自公,民主,そして共産党が候補者を立てた.嘉田現知事が後継に指名したのは前民主党衆院議員の三日月大造氏である.この選挙の構図は,東京都知事選挙と同じである.共産党候補ももちろん脱原発を掲げる.しかし都知事選で明らかになったように共産党候補の脱原発は,脱原発を実現するためではなく,脱原発陣営を分断するためである.それが客観的に果たしている役割である.このままでは滋賀県も嘉田さんから再び自公の知事にその座を奪われるだろう.
 そして,中央政治ではいわゆる「集団的自衛権の行使容認」が内閣の方針として決まろうとしている.もしあの都知事選で宇都宮陣営が一歩譲り候補が統一されて,舛添を引きずり下ろしていたなら,集団的自衛権問題もまったく違った展開をしていただろう.公明党の裏切りを非難する人も多いし,それも間違ってはいないが,公明党とはもともとそんなところである.それよりはむしろ,共産党社民党が現実を動かす政治ということを知らず,人々の間に分断を持ちこむことの方が,大きな問題である.
 このように,内からは公明党に支えられ外からは共産党に支えられ,安倍政権はこの世の在り方を大きく変えようとしている.資本の勝手を規制してきた約束事を破壊し,いよいよ働くものを見下し,まさに人間を資源として搾り取る.それは,基本的な人間の尊厳の否定であり,その上にアメリカの手先として各地に兵を差し向けようとしている.しかしそれでもそれは許されないし,実際に闘いはこれからである.
 そろそろ準備をして大阪に出かけよう.その報告はまた帰ってから.
 電車の中で思ったのだが,共産党の人で善良で献身的な人を幾人も知っている.家の向かいの人も,89歳になっても赤旗を配っている.ここにかけた生涯だった.彼の家には「原発からの撤退,今すぐ決断を」のポスターが貼ってある.人に言う前に共産党は本当に決断したのかと言いたい.本当に決断し原発から撤退するためには,その願いをもつ人々の力を一つにまとめなければならない.ところが客観的にこの党が社会的に果たしている役割は,人々を分裂させることになっている.このことを,どこかでわかってほしいと思う.同じことは公明党にもいえる.かつていつも食事をしていた大衆飲み屋は学会の人が経営していた.皆いい人らだった.こちらが議論をふっかけると,言うことはわかるのですが…と少し迷惑顔であった.主観的な思いとは別に,客観的に果たしている役割について,気づいてほしい.学会の方は地方からの抗議が少なくないようだ.
 日が長い.7時関電前はまだ明るい.雨は上がり,雨具はいらなかった.いつものようにおよそ100人の人が集まる.共産党の議員らしき人もいたのだがこちらから議論をふっかけることはしない.私にとっても,まったく日常の行動になった.この行動につきあいながら,多くのことを考えさせられた.それがこのような行動の意味だろう.いつもの彼とも一緒に帰りながらいろいろ話しもした.上の写真は6月の花,アガパンサスと人々.こうして6月も順次終わってゆく.