磐座(いわくら)を守れ

 今日は,若い人たちが地元の阪急甲陽園駅で「越木岩の磐座(いわくら)を守れ」という署名活動をするというので,午後3時から6時まで手伝ってきた.この問題は前に「人間と土地,そして螢」にも書いた.
 夙川の西側にある越木岩神社に隣りあう地で,これまで短期大学のあったところが,それを経営する学校法人が金融資本にだまされ,リーマンショックで学校法人資産をすべて失い,それどころか資産の倍以上の借金を背負い,短大の土地をマンション開発業者に売り払った.
 大学構内にはいくつもの大きな岩があり,それはご神体として長く,縄文・弥生の時代から敬愛されてきたものである.かつて短期大学を建設するとき,それに配慮して岩を残して校舎を建ててきた.校庭に巨岩が配置されているという面白い校舎だった。ところが,集合住宅を建てようという業者がその巨岩を破壊しようとしている.これに反対する運動がいろいろと起こっている.
 今日署名活動をしたのも,そんな中の一つのグループ,越木岩保全運動の人らである.リーダーは今年の西宮市議会選挙に出て落選した,安達 真周(ましゅう) 君.ブログはここ.彼は先日の選挙公報も手書きで書いて,それで印象にあった人.こんな若者が出てきたことも嬉しい.この駅は、灘高校と並ぶ兵庫県下の受験校,甲陽学園高校の最寄り駅なのだが,真周君,学校が終わって駅に降りてきた甲陽高校の若い人らとも「今の時代は金々の時代で、若者も格差で苦しんでいるし云々」と結構うまく会話している.そこから抜け出そうと甲陽に来た高校生たち,なにを考えただろうか.
 地元の町内会長が駅前で署名活動していれば,いろんな人に出会う.明日も会合で一緒になる人や,同じ自治会の人らに出会う.「会長,こんなこともしているのですか」「これはあくまで個人としてだけどね」という所から入って,一万年人々が信仰し,土地と風土とそこでの生活をまもってきた岩を,こうして今のわれわれが崩していいのか,と話してゆく.金のために岩を崩す,それをわれわれの時代にすることは,私はやはり許せないのですよ.会長の気持ちはよくわかります.がんばってください.この老婦人も署名してくださった.
  今日は,京都下鴨神社糺の森が半分崩され集合住宅が建つ,それに反対している若い日本画家の女性が子供や夫さんとともに支援に来ていた.彼女の描いた水墨画である.この問題を知って,この集合住宅の建設現場に入り込んで,水墨画の写生画を描いた.霊感にうたれて描いたと彼女もいうその画はほんとうに美しい.日本画が,新しい問題に出会ってそこで再生した.彼女が演説で言っていたように,これはいのちの問題,人間がどのように生きてゆくのかという問題,金金金でよいのかという問題そのものである.今日のような行動も,私の言う「経済から人間への大転換期」の一コマなのだろう.
 ところで昨日,西播州の親戚からアユの「うるか」を送ってきた.アユのはらわたで作る塩からである.兵庫県は西部,揖保川のアユで作ったものである.写真下左のが今年の5月につけたもの,右のが数年前につけたもの.もうどろっとしている.上のは前にもらったもの.乾燥して塩のかたまりになっているが,香りがいい.うるるかは,耳かきに少しとって,下唇につけておくと,それで一合は飲めるという,究極の酒の肴である.
 そして最後の写真は大津に住む妹からもらった鮒寿司.それを妻の田舎の蔵にあった昔の皿に載せたもの.鮒寿司は琵琶湖の土地が生んだなれ寿司である.鮒の身もうまいが、いっしょにつけた米が本当にうまい.
 うるかといい鮒寿司といい,川の魚の恵みである.昔,小さいころ宇治川べりにすんでいたので,これらに込められた川の香りがなんとも懐かしい.これを味わい一献また一献.こうして日本列島弧に住むものは,縄文・弥生の時代から川の恵みを味わって,この地に住んできた.これを原発はすべて壊そうとしている.そのように考えれば,地元の巨岩を守れというこの運動は,われわれの原発反対運動なのだ.