コタロー

 子犬のコタローを飼いはじめた.3月にゴローが死んでから,こちらは運動不足.もともと体は硬いのだが,散歩しないとよけい体が歪む.彼がいたときは朝起きてまずは朝飯の前に散歩をする.それがよかった.また夕方もできるかぎり彼を連れて歩いた.毎日朝夕あわせて1時間弱の散歩をしていた.近所には大手を振って独りで散歩している人もいるのだが,こちらは犬がいないで自分だけで散歩するのももう一つ.それでまた犬を飼おうと思った.保健所で殺されそうな犬をもらうことも考えた.ところがわれわれのように60歳を超えた夫婦暮らしでは,保健所も犬をくれない.どちらが先に逝くのかわかったものではないと言うわけだ.
 それで子犬を買うことにしたが,ホームセンターで売っている犬は高い.この犬もはじめは18万円の値がついていた.2月生まれの兄弟4匹で売りに出されて,他のが売れてゆくのに,彼に買い手は現れない.そのうちホームセンターの店のお兄さんが7万円ではどうですかと言う.4月から小さいゲージに入れられているので可哀想なのだが,われわれの感覚ではまだ高い.ところが10月末になって,3万円ではどうかと言ってきた.「う〜ん,そう言われれば,買(こ)うたろーか」となった次第.それで名前も「コタロー(小太郎)」となって,11月20日にうちに来た.血統書つきの白茶色の柴犬である.
 今は室内犬.暖かくなれば外で飼うつもりだが,そのときできるかどうか.けっこう賢くて,私が書斎で座って仕事をしていると後ろで寝ている.散歩に出るのとこちらが仕事で出るのの違いもわかっている.ということで私には散歩の友ができた.歩いているといろんな人が声をかけてくれる.前のゴローは,後で聞くと,犬も飼い主もいつも難しい顔をして散歩していはりましたね,となる.コタローとはどんな顔で歩こうか.
 わが家の飼い犬はこの犬で3匹目.犬というのは平均寿命が14〜5歳なので,人間に命の生き死にを教えてくれる不思議な生きものである.まったく,コタローとどちらが先に逝くのかわかったものではない.とにかく,半年小さななゲージに閉じ込められたいたのが,今は彼にとっては家中が犬小屋.けっこう楽しいのではないか.