一歩前進

昨日は京都で授業.その前に四条烏丸あたりで,組み立てられた鉾を見てきた.長刀鉾函谷鉾(かんこぼこ)菊水鉾鶏鉾,これら四条烏丸交差点の四方にある.いずれも豪華な織物が下げられている.宵々山,宵山ときて巡行は17日.祇園祭平安時代,東北地方で貞観地震のあった年にはじまる鎮魂の祭である.
鶏鉾のいわれを読んでもわかるように,中国古代の物語を踏まえ,そのうえに江戸期に輸入された西洋の絨毯などを下げているものが多い.それぞれ,有料で鉾にも登れる.またそれぞれがちまきなども売っていて,ちょうど夕立が上がった後であったので,人通りも多かった.一年にいちどはこの鉾を見ないと落ち着かないので,いっとき地上に出て見てきた次第.
さて,参院選は終わった.数で見ればまだまだ改憲派が多数なのであるが,中味を見るといくつかのところで一歩前進であった.安倍首相は不利な争点を隠して今回の選挙をおこなったが,沖縄,福島,山形など,基地問題,核汚染問題,TPP問題などの争点がはっきりした選挙区では,野党統一候補が勝利した.東北各県は自民党惨敗であった.また比例区で投票したものとしては,最後の1人に生活の党と山本太郎青木愛が入ったのも,無駄票にならずによかった.
量ではむこうが勝ったが,質において反ファシズムの側に前進があった.この質はいずれ量に転化してゆく.政治において最後を決めるのもは量ではない.少数であることを恐れることなく,確信と信念にもとずいて行動する.これがすべてを決めてゆく.もっとも兵庫県は3人区なので候補者の一本化はなし.4位が民進党で5位が共産党.もし2人が統一できていれば,2人をあわせた得票では1位当選.それは出来なかった.また比例区の統一名簿も出来なかった.結局は,もっと反ファシズム運動としての共有をすすめて,複数区でも比例区でも候補を調整できるまでにいかないと,多数にはならない.
一定の質が,量に転じるという例が,昨日の野党統一の都知事候補の決定であった.前回の知事選では細川,宇都宮の統一がならず,敗れていただけに,どうなるかと心配した人も多かっただろう.しかし,前回のことを教訓に,ここでも一歩の前進があった.東京都知事選で,昨日は鳥越氏と宇都宮氏のあいだで合意が成立,鳥越氏が野党統一候補となった.鳥越俊太郎候補は,第一声で,「困ったを希望に変える東京へ」を掲げ,宇都宮氏の政策を取り入れた.
今回の都知事選の争点ははっきりしている.安倍ファシズムを許すのか否か,である.「それは国政の問題で知事選の課題ではない」という意見がある.しかし,かつてのあの戦争を思い起こせ,である.戦争は国家が遂行したことであり,都の問題ではなかったというのか.東京空襲でどれだけの都民が犠牲になったのか.これを繰りかえすのか.
国が誤った方向にゆこうとしており,それが都民にとっても大きな問題であるならば,これに反対する候補を知事に選び,そこを基盤に国の政策を正すということは,当然である.かつてのあの戦争の教訓を忘れ,国家が同じ過ちを繰り返している沖縄,福島,山形などでは,参院選でもファシズム側が敗れている.
歴史はいかに紆余曲折を経ても,到達すべきところに到達する.資本主義が終焉にむかうという客観的な条件のもとでは,ファシズムに土台はない.新しい,つぎの時代を担う人間が歴史に現れつつある.われわれの世代は,歴史の教訓を次に引きつぐ責任がある.出来るところから一歩一歩,である.