アスベスト問題

nankai2017-09-18

 ストップ・ザ・アスベスト西宮からの呼びかけをもらい,16日(土),アスベスト市民ネット 第1回シンポジウム 〜身近に潜むアスベスト その危険と対策について考える〜に参加してきた.主催は,アスベスト市民ネット,中皮腫じん肺アスベストセンター,NPO法人東京労働安全衛生センターであり,兵庫県保険医協会が後援している.
 いくつかの新聞も取り上げている.
 ◆神戸新聞石綿問題に向き合う市民ネット結成 西宮、堺など
 ◆大阪毎日新聞シンポジウム アスベスト、危険と対策 兵庫・西宮で16日
 1時半から5時過ぎまで,以下の内容で行われた.
アスベストとは何か これだけは知ってほしい〜基礎から対策まで〜/中皮腫じん肺アスベストセンター事務局長 永倉冬史 父はなぜ中皮腫に/中皮腫アスベスト疾患・患者と家族の会 ひょうご支部 直木賞作家 藤本義一氏長女 中田有子 アスベスト被害者の声/中皮腫アスベスト患者・患者と家族の会 古川和子 アスベスト検診」を大いに利用しよう/兵庫県保険医協会 上田進久 各地のアスベスト問題の報告/西宮市の事例 ストップ・ザ・アスベスト西宮 大島賛都/さいたま市の事例 エタニットによるアスベスト被害を考える会代表 斎藤宏/堺市の事例 堺市議会議員 長谷川俊英/自治体条例のあるべき姿 ジャーナリスト 井部正之 質疑応答
 2014年ですでに交通事故の死者と中皮腫の死者が同じになっている.今後,老朽化した集合住宅などの解体期をむかえる.平成40年度がピークになるといわれているが,住民がよほど監視を強めてゆかなければならない.
 今から思えば,阪神淡路の大地震のとき,電車が止まり,倒壊した集合住宅など鉄筋や鉄骨の建物の残骸の横を歩いたし,代替バスも瓦礫の間を走っていた.東日本大震災でも瓦礫が乾燥し飛散する.アスベストセンター事務局長の永倉さんは,釜石でマスクを提供することもしておられたそうである.上の大阪毎日新聞にも出ている.
 中皮腫アスベスト患者・患者と家族の会の古川さんの報告のときに,驚いた.昔働いていた高校の同僚の写真がスクリーンに出た.2枚出て左のはすぐ彼と分かったが,右の亡くなる少し前のはわからなかった.自分の方から連絡をとってきた人ということで,活動報告の一つとして紹介されていた.彼は,自分が中皮腫と診断されたときのことを,2009年に「年頭に想う」として書いている.この一文を私は知らなかったが,急いで持っていた TabPC で見つけて一気に読んだ.また,次のようなニュースもあった.2010年03月04日05:38/アスベスト:奈良に医療体制確立を/被害者・山下さん、患者と家族の会で訴え/奈良である.
 彼は私より5歳下で,市立芦屋高校に大学を出てすぐ就職してきた.英語の教員であったが,書道もうまく,個性のある人だった.その後,2年間休職して,海外青年協力隊でモロッコに行っていたこともある.彼は奈良の王寺の人.彼の言葉から故郷を愛していることがよくわかった.王寺の商店街に実家があり,一度行ったこともある.
 最後に会ったのは,阪神地震の直後だった.私はそのときはもう他の仕事に変わっていたが,そのころ彼は東灘区の御影に住んでいた.連絡がとれ,こちらから会いに行った.お互いの無事を確認し,いろいろ話をした.彼は定年になって時間が出来たらまた旅行もしたいし,モロッコでの映像の整理もしたいなど話していた.
 その愛する故郷に30年住み,そこでアスベストを吸い込んだのだ.ニチアス(旧名,日本アスベスト)の工場が王寺にあった.その街を離れて20数年,定年を目前にして中皮腫を発症したのである.定年になればしようと考えていたことも出来なかった.アスベストとはなんと残酷なことか.そして彼の無念を思うと言葉もない.
 彼が片肺を切除したことは,人づてに聞いていたが,直接は連絡できなかった.亡くなったのも聞いていたが,ここでその遺影に出会うとは思ってもいなかった.

 私の短くなった余命を償わねばならない。ニチアスが潰れて償えなくなれば、公害をまき散らすことを知りながら企業活動を黙認してきた国がその責めを負うべきである。引き下がれない。

と彼の残した言葉は,われわれに重い.アスベストに関する法的枠組みは,欧米に比べて日本は本当に弱い.半世紀は遅れている.法や行政は頼りにならない.地域の住民がまとまって解体業者と協定を結び,協定書を交換し,そして工事を監視する.これが大切だ.とりあえずわが町内ではそれをし,解体工事はあらかた終わった.これは彼にも報告したいと思う.合掌.