夏の盛りに

 先日,ニイニイゼミはもうこのあたりにはいないのかと書いたが,ニイニイゼミの死骸を家の前の道で見つけた.この夏鳴き声は聞けなかったが,まだいるのだ.写真を撮ってから土に還した.

 それにしても暑い.この暑さのなかでのオリンピックなど不可能である.「1%による1%のための大会」に書いたが,いまのオリンピックはまさに 1%による1%のための大会 となっている.この1%にはいわゆる原子力マフィアも入る.原発事故は収拾できるという虚構を演出するために2020年のオリンピックは開催される.この夏の時期を選んだのも1%の側である.しかしこれは大きな失敗だった.このまま開催すれば,選手,ボランティア,観衆の中で熱中症重篤な事態に陥るものが続出する.中断せざるを得ない事態さえ起こるかも知れない.そして日本政府の責任が国際的に問われる.

 この暑さの中ではあるが,日が陰った5時半からは第2第4土曜が定例の梅田解放区であった.参加者も増え,20人を超えていた.徴用工問題や従軍慰安婦問題、辺野古基地問題などを語る.
 ここはほんとうに人通りの多いところだ.道ゆく人のなかにも,こちらの言うことに耳を傾ける人がいる.それでも多くの若者は関わりないように通り過ぎてゆく.彼らのほとんど選挙にも行かなかったのではないか.むしろ,中国人の旅行者が立ち止まってゆく.誰かが訳して説明している.ほう,こんな日本人もいることはいるのだ,というところかも知れない.日本に住む韓国人もまたたちどまる.写真を撮らせてください、と言って撮っていった二人組がいた.また,最後まで向かいに立って聞いていてくれた女性と,もう一人通りがかった男性が,それぞれカンパをくれた.

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 さて昨日,<佐川元国税庁長官ら再び不起訴 大阪地検特捜部、一連の捜査終結 森友学園問題>と報じられた.しかし,森友・加計問題は,佐川元国税庁長官が主役ではない.「分水嶺にある近代日本」に次のように書いたが,安倍首相の収賄こそが問題の本質である.

 今年にいたるこの数年の世のあり様をひと言でいえば、近代国家の枠組とそれを支える柱の崩壊である。
 安倍首相の収賄は首相そのものの犯罪であり、(造船疑獄に比して)はるかに悪質で規模も大きい。また、公文書を偽造し、国家の基本的な統計も改ざん操作してきた安倍政府とその官僚の悪事は、造船疑獄の比ではない。しかし捜査すらなされない。

 首相自身が事実として賄賂を受け取り,そして,森友疑獄では8億円の便宜供応.加計学園疑獄では,?億円の供応.すべてアベの収賄の見返りである.加計疑獄は鮮明である.しかしこのことを指摘する新聞やテレビは皆無である.日本の大手新聞やテレビは報道機関ではない.アベ政治に都合のいいように国民を洗脳する洗脳機関である.それはおさえておきたい.

 そして,収賄首相の居直りは,悲惨国家日本の現実である.それを経済の面から見て,世界的投資家ジム・ロジャーズが次のように言う.

「私は日本関連資産を全て手放した」
~日本の凋落ぶりには、めまいがする

 将来のことを考えれば、日本政府がただちにやるべきことは、財政支出を大幅に削減し、同時に減税を進めることです。この2つを断行すれば、状況は劇的に改善したはずです。
 安倍首相がやったのはすべてこれとは真逆のことでした。彼が借金に目をつぶっているのは、最終的に借金を返さなくてはならない局面になったときには、自分はすでにこの世にいないからなのでしょう。
 これから20~30年後に歴史を振り返ったとき、安倍首相は、日本の経済に致命傷を与えアジア最貧国へ転落させた人物として、その名を刻んでいるはずです。

 彼は投資家なので経済面からいうが,しかしこれは経済だけの問題ではない.近代国家の枠組とそれを支える柱の崩壊は,政治においても,それをとおして世のあり方そのもにおいて,そして国家としての対外関係において,すべての面で起こっている.
 つくずく,愚かなことは二度くりかえさないと,教訓とはならないのか,と思う.
 「再びドイツまで」にも書いたが,ドイツはまさにその愚かなことを二度くりかえした.ごく普通に生活してきた人が,状況によってヒトラーを賛美するようになることを大きな痛みとともに教訓とし,それが教育を通して若い人らにも伝えられている.
 「【特集】ドイツの若者は慰安婦問題を扱った映画「主戦場」をどう見たか
「歴史を知る」。それは「問い続ける」ということ
」を読むと,そのことがよくわかる.
 それに対して,日本もまたあの戦争の敗北とそして福島の核惨事と二度の愚かなことをしながら,そこから教訓を引き出せていないことをつくづくと思い知る.それどころか,福島の核惨事を逆手にとって,近代国家の枠組とそれを支える柱を崩壊させ,アベ政治が生まれたのだ.ロジャーズは経済面から「最貧国」といったが,このままでは人そのものが大きく崩れ,人でなし国家となる.
 「韓国存亡の危機。日米中ロ北の四面楚歌状態」などという論調が大手を振って語られるが,存亡の危機にあるのはこの日本である.日本の植民地支配への抵抗,戦後のアメリカ傀儡の李承晩や朴政権との闘いなどを通して,韓国の人々はずっと先を行っている.我々ははるかにおくれている.アベ政治は韓国への差別意識を煽りそれを政権維持に利用しているが,まったくこれは哀れなことなのだ.
 あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」展示中止事件で脅迫FAX送付の男が逮捕されたが,少女像展示を認めた大村秀章・愛知県知事を「辞職相当だと思う」と批判した吉村洋文・大阪府知事に対し,大村知事は「はっきり言って哀れだ」と逆に批判している.まったくその通りであり,大阪府民は,その愚かさを哀れみをもって指摘されるほどの者を知事にしている.このことに気づかねばならない.

 哀れな首相,哀れな知事,である.やはり我々は二度目の愚かな破局に向かっているのかも知れない.しかしそれでは犠牲が大きすぎる.それでも,非西洋で最初に近代化=資本主義化した日本の,人類史的な経験としてそれもありうるという立場から,そこからもういちど立ち上がるそのためのささやかな準備として書いたのが『神道新論』であった.われわれの世代は見とどけることができなかも知れない.誰かこれを見とどけてほしいとつくづく思う.
 奄美大島に行き,青空学園を20年をふりかえり,そういう者としてアベやめろと梅田に立つ.小さなことしかできないが,それでいいではないか.